税金滞納と差押

国民の義務のひとつ、納税。
ほとんどの人が払っている税金についてお話します。

なぜイチ主婦であるわたしが税金を語るのかというと、税金徴収の現場で働いていたことがあるから。
と言っても非正規雇用でしたし、主観で話す話題でもないのであくまで「法律上の決まり」を軸にして書いていきます。法律も変わるので、あくまで2017年5月現在ということで…。

この記事では

  • 税金を払わないと差押えされる?
  • 何を差押えられるのか?
  • 払えない時はどうすればいい?

など、税金(住民税=市県民税)について不安になりがちなことにお答えします。



差押えの条件はとても厳しい

「差押え」って怖い響きですよね。身ぐるみ剥がされるんじゃ?人生の恥だ!くらいに思うかもしれません。
いったいどういう状況で差押えされてしまうんでしょうか。

納期限を過ぎてから1ヶ月くらいで差押えできてしまう

一ヶ月!?早っ!

なんと、法律には「督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納(滞納なし)していなければ差押えなければならない」とあるのです。(地方税法第331条)

督促状がどういうカタチで送られるかは住んでいる場所によって違うかもしれませんが、ハガキ状になっているものが多いですね。督促状自体は「納期限後20日以内に発しなければならない(市町村の条例で期間は変えられる)」とあります。(同329条)

ということは、例えば…6/30が納期限だとすると、7/20までに督促状が送られて7月31日には差押「なければならない」状態になっているんです。あくまで早い例です。

法律ではかなりシビアになっています。
が、実際にはここまでスピーディーに差押えてくるところはほとんどないはずです。うっかり納め忘れてるだけかもとか、いちいち差押えしてたら件数が多すぎるとか、他に差押えすべき案件があるとか…中の人にもいろいろあります。

滞納=差押えられる条件は整っている、ということは認識しておくべきでしょう。

何を差押えられるのか

差押えって何を持っていかれるんだろう?財産って言えるものはないんだけど…
わたしも全ては把握していないので、代表的な差押え対象財産をご紹介します。

  • 貯金(ゆうちょ銀行)
  • 預金(他の銀行)
  • 不動産
  • 動産
  • 車両
  • 保険返戻金
  • 給与
  • 売掛金

など。

預金・貯金はわかりやすいです。一時的に取引を差し止められ、残高を引かれます。
不動産は基本的に「土地・家屋」に対して差押えが入ります。ローンのない無担保物件といわれる不動産はお金にしやすい(嫌な言い方です…)ので対象になりがち。
動産は金銭的価値のあるモノ。がメインですが、Yahooの官公庁オークションを見ると子どものおどうぐ箱が出てたりして、なんでも良いんだな感があります。

結構痛い?のが給与や売掛金。
収入が減るだけでなく、勤務先・取引先に税金を滞納していることがバレてしまうので信用に関わります。

放っといたらなんとかならない?

ちょくちょく未納の通知が来るけど、しょせん脅しでしょ?忙しいし放っといても平気でしょ~なんて思ってますか?

税金にも時効はあります。滞納処分(差押え)をしないまま5年が経過すると時効消滅します。(同第18条)
それは徴収する側からすれば怠慢になるので、できるだけ避けたいわけです。

時効を避けたい徴収サイドはどうするか?
そこで「時効の中断」というルールが登場するんです。時効の中断は、発動すると時効カウントがリセットされます。あと1日で時効!と思っても、時効中断するとまた5年後を待つことに。

時効は、督促・差押・債務承認などで中断されます。(同18条の2・民法第147条)
一度差押されてしまえば解除されるまでずっと時効が止まったままです。
債務承認は基本は「これくらいの債務がある」と認めた取り交わしがあって承認とみなされますが、取扱いは統一されていないようです。

このような要件によって時効中断するので、5年逃げ切ればいいともいかないんです。
ちなみに、その執行期間だけ時効の進行が止まる「時効停止」もあります。

納付困難なときはまず相談!

当然払えるなら払うべきです。しかし、払いたくても払えない時はあります。そんな時にどうすればいいか?答えは簡単です。

窓口に相談に行けばいいんです。

役所、しかも税金担当と思うと怖いんですよね…税金なんだから払えと一蹴されたらどうしようと思うかもしれない。
でも放置したら、なんであなたが税金を滞納しているのかがわからないままです。悪質な滞納者と見分けがつかなくなってしまいます。

どんな事情があって納付できないのかをちゃんと説明しましょう。現在の収入・支出・事情…明細など資料があればなお良いです。

なぜそこまでしないといけないのか?
法律でもちゃんと救済措置が用意されているからなんです。

「災害被害・病気・事業の廃止などで納付できないと認められるときは1年以内は徴収の猶予ができる」(地方税法15条の1)

「誠実に納付する意思があって、財産を換価すると生活が困難になるおそれがあるときは、換価を1年以内は猶予できる」(地方税法15条の5)

「財産がない場合、または換価によって生活をを窮迫するおそれがある時は処分の執行を停められる」(地方税法15条の7)

上の文章、要約して書いてもわかりづらいんですが…

換価とはお金に換えること。真面目に納付したいけど、差押えで財産を取られたら生活に支障が出てしまう!もっと払えなくなる!と伝えれば、猶予してもらえるかもということです。
ちなみに換価の猶予中は時効が停止します。(国税徴収基本通達第151条関係12)

実際に役所に相談にすると分割払いにしてもらえることがあります。「○○法の△条を適用します」とは言われないと思われますが、税金を分割払いにしてもらえたりする背景にはこんな法律があるんですね。

怖くないから早めに対処しましょう

役所とコンタクトをとったら納付の遅れを叱咤されるのでは、と怯えてしまうかもしれません。
わたしも年金の猶予申請をほったらかして電話来たことあるので、ヒヤヒヤ感はわかります。

しかし、その心配はほぼ杞憂ですからご安心を。公務員だって人間です。理由がある人に対して辛くあたることはありません。
「これから前向きに納付したい」という気持ちを伝えれば穏やかに相談に乗ってくれます。

とは言え、一部で知識・経験不足の人がいるのも否定できません。行政サービスとしては公平公正な対応が求められるのですが…現実問題として。

そもそも臨時職員というアルバイトのような立場の人が窓口対応していることもあります。もし相談相手に不安を感じたら、「申し訳ないが詳しい人に変わってもらえませんか」と切り出すのもありです。お互い噛み合わないまま話を続けるよりはいいと思います。

長々放置すると延滞金もかさみます、払えない状況になったら早めの相談を!
ちなみに税金をローンで借りて払うなんて悪手ですよ。ローン借りる→税金払う→ローン返済→税金滞納と負のスパイラルになりかねません。今の状況でどうすればいいかを考えてくださいね。

※当記事の法令は法令データ提供システムより引用。条文は長文かつ難解なのでわかりやすく省略・意訳しています。もとの条文を読みたい方は検索してみてください。